Baseline — Terrain & Seasonality
東京湾 期待値マップ
釣果は年ごとに動きます。けれど湾の形と深さ、潮の通り道、魚が寄る季節は、そう簡単には変わりません。 このページは、その「変わらない側」だけを集めた土台です。ここに実際の釣行記録を重ねていきます。
期待値といっても確率ではありません。「その月に、その魚が釣りの対象として成立しやすいか」の目安です。 出典はすべて末尾に並べ、各行から参照できるようにしています。
湾の形と性質
数値はすべて出典つき東京湾を釣り場として理解するとき、いちばん効く事実は「湾口が狭く、外海との海水交換が行われにくい閉鎖性の強い海域」だということです[1]。 多摩川・鶴見川・荒川・隅田川・江戸川・小櫃川といった河川が絶えず淡水と栄養を注ぎ込み[1]、 それが外に流れ出ていきにくい。だから内湾はよく肥え、同時に夏場は底層の酸素が薄くなりやすい。
もうひとつが深さの落差です。内湾の平均水深は約 15 m しかないのに、湾の外に出ると東京湾海底谷が水深 500 m 以上に達し、相模トラフへ落ちていきます[1]。 浅い内湾と深い外洋が、6.5 km の狭い口でつながっている。この落差と狭さが、湾口部の速い潮を生みます。
釣り人が「湾奥」「中ノ瀬」「湾口」と呼び分けるのは、単なる距離の話ではありません。 濁りと栄養に富む浅い内湾、周囲より浅い台地状の中ノ瀬、潮が走る湾口——性格の違う 3 つの海が 1 つの湾に同居している、と捉えるのが実態に近いはずです。
海図
海岸線は実測データ海岸線と海域の形は実測データです。OpenStreetMap の海岸線(51,568 点)を Web メルカトル図法に投影して描き、海の塗りも同じ海岸線から起こしているため、塗りの縁と輪郭線が完全に一致します[16]。 経緯線は 0.1 度ごと、スケールバーは 10 km です。
⚠️ 内湾の等深線は描いていません。公開されている全球水深グリッドは東京湾内湾の値を持っておらず、 走水沖(実際は水深 55 m 前後)が −0.4 m と出るなど、そのまま等深線にすると事実と異なる図になります。 描いているのは値が妥当な 100 m 以深、すなわち浦賀水道の南側から湾外にかけての範囲だけです[17]。 内湾の水深はエリアの性格の表に、出典つきの数値として記載しています。
エリアの性格
釣行記録もこの 9 区分で残す| No. | エリア | 位置 | 地形・水深 | 釣りの上での性格 |
|---|---|---|---|---|
| 01 | 湾奥羽田・川崎沖 | 荒川・多摩川などの河口前面 | 浅い。河川水の影響が最も強い | 淡水と栄養の流入で餌が多い。濁りと水温の振れが大きく、季節の進みが早い |
| 02 | 本牧沖横浜 | 湾西岸、根岸湾の前面 | 港湾構造物と人工の根が点在 | メバル・カサゴなど根周りの魚の定番。東京湾のメバルとカサゴは同じ船で狙う船宿が多い[9] |
| 03 | 金沢八景沖野島・八景島 | 湾西岸、平潟湾の前面 | 湾内では浅め。護岸と島まわり | 船宿が集まる出船拠点で、ここを基点に湾内各所へ散る。スミイカの乗合もここから出る[14] |
| 04 | 中ノ瀬 | 富津岬沖に広がる台地状の地形[3] | 最浅部 13 m 前後 | 周囲より浅い砂の台地。シロギスの好ポイントとして知られる[10] |
| 05 | 木更津沖盤洲干潟 | 湾東岸、小櫃川河口の前面 | アナゴ場で 14–18 m | 広大な干潟を背負う遠浅の海域。アナゴの主戦場[11] |
| 06 | 大貫沖富津 | 富津岬の南、内房側 | 砂地主体の浅場 | シロギス・イシモチの釣り場として知られる[12] |
| 07 | 竹岡沖・金谷沖 | 内房、湾口寄り | 根と砂地が入り交じる | カワハギの有名ポイント[13]。冬場はタチウオの深場も近い[7] |
| 08 | 走水沖・観音崎沖 | 浦賀水道の三浦半島側 | 水深 55 m 前後 | 湾口の速い潮がそのまま当たる海域。大アジの代表的な釣り場[5][6] |
| 09 | 久里浜沖 | 浦賀水道の南寄り | 100 m 超の深場あり | 湾内で最も外洋に近い。年明けのタチウオはこの深さで終期を迎える[7] |
魚種別の期待値
■ 最盛期 / □ 対象になる時期| 魚種 | 主なエリア | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| アジ[5] | 走水沖・観音崎沖・横浜沖・湾奥 | □ | □ | □ | □ | □ | □ | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| タチウオ[7][8] | 夏=千葉側の浅場/冬=観音崎・走水・久里浜の深場 | □ | □ | ・ | ・ | ・ | □ | □ | □ | ■ | ■ | ■ | □ |
| マダコ[4] | 横浜沖ほか神奈川県側 | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ■ | ■ | ■ | ・ | ・ | ・ | ・ |
| シロギス[10][12] | 中ノ瀬・大貫沖 | ・ | ・ | □ | □ | □ | ■ | ■ | ■ | □ | □ | □ | □ |
| アナゴ[11] | 木更津沖(水深 14–18 m) | ・ | ・ | ・ | □ | □ | ■ | ■ | □ | ・ | ・ | ・ | ・ |
| マゴチ[12] | 富津・木更津沖 | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ■ | ■ | □ | ・ | ・ | ・ | ・ |
| カワハギ[13] | 竹岡沖・金谷沖 | □ | □ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | □ | □ | ■ | ■ | ■ |
| メバル[9] | 本牧沖ほか根周り | ・ | □ | ■ | ■ | ■ | □ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ |
| カサゴ[9] | 本牧沖ほか根周り | ■ | ■ | □ | □ | □ | □ | □ | □ | □ | □ | □ | ■ |
| スミイカコウイカ[14] | 湾中央〜金沢八景沖 | □ | □ | □ | □ | □ | ・ | ・ | ・ | □ | ■ | ■ | ■ |
| マダイ乗っ込み[13] | 湾口〜内房 | ・ | ・ | ・ | ■ | ■ | □ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ | ・ |
| ショウサイフグ[8] | 大貫沖ほか | ・ | ・ | □ | □ | ■ | ■ | ■ | □ | □ | □ | □ | ・ |
月の区切りは出典の記述を月単位に丸めたものです。実際の初日・終日は年によって前後します。 マダコは神奈川県側の東京湾で 6 月 1 日〜8 月 31 日 の自主規制期間が設けられており、1 人 20 杯まで・300 g 以下はリリース推奨とされています[4]。 出船状況と最新の釣況は必ず船宿の情報を確認してください。
この表に載せていない魚について
近年、アカハタやオオモンハタといった南方系のハタ類が分布を北へ広げ、相模湾や三浦半島、外房でよく釣れるようになったと報告されています[15]。 ただしこれは湾の外側の話で、東京湾内湾で成立している釣りものではありません。 内湾で根に着く魚といえば、いまのところカサゴ・メバル・アイナメです。
同じく、イサキ・キハダ・カツオ・アマダイなどは関東の船宿のカレンダーによく並びますが、 主な釣り場は相模湾や外房であって東京湾内湾ではありません。 「関東で釣れる」と「東京湾で釣れる」を混ぜないことを、この表の方針としています。
出典
2026-08-11 参照- 官公庁
国土交通省 関東地方整備局 東京湾口航路事務所「航路の紹介(浦賀水道航路と中ノ瀬航路)」(航路幅・延長・計画水深 −23 m・航行ルール)
www.pa.ktr.mlit.go.jp/wankou/sea-lane/index2.htm - 釣りメディア/自治体
つり人「変化する海、北上するターゲット。根魚の至宝ハタの素顔」、神奈川県「水産業(回遊性魚介類)への影響と適応策」
web.tsuribito.co.jp/beginner/mook-2111-rockfish-hatano-sugao - 地理データ
海岸線 © OpenStreetMap contributors(ODbL)— Overpass API で natural=coastline を取得し、Web メルカトル図法に投影して作図
www.openstreetmap.org/copyright - 地理データ
水深 — NOAA NCEI DEM global mosaic(ArcGIS ImageServer から EPSG:4326 で切り出し)。内湾の値を持たないため 100 m 以深のみ使用
gis.ngdc.noaa.gov/arcgis/rest/services/DEM_mosaics/DEM_global_mosaic/ImageServer
各出典の記述を月単位に整理し、複数の情報が食い違う場合はより限定的な(狭い)期間を採用しています。 船宿のカレンダーには関東全域の釣り物が並ぶことが多いため、東京湾内湾・湾口の釣り場に限って採録しました。